定年退職が迫り再雇用か転職か?お悩みの皆様、記念となる退職日を目前になぜこんなに悩まなければいけないんでしょうか!?そう思います。退職したら少し休もう!、女房と旅行にでも行こう!など楽しみなはずなのにこのような将来への不安は何なんでしょうか。
私は、日本国内での法人営業の経験と海外での法人営業、個人営業の経験があります。特に海外では20年以上の駐在経験がありその国の文化習慣まで理解できていますし、転職経験も5回、その度に待遇面がよくなる反面プレッシャーも強くなったことを覚えています。
この記事では、なぜ再雇用なのか?転職なのか?そのために何十年もの職務経歴をどのように整理したか?職務経験からどのようにスキルやキャリアを棚卸ししたか?なぜそんなことをしようと思ったか?について説明します。
1、60歳になったらスキルとキャリアの棚卸が必要6つの理由
(1)職務経歴書は転職時に必要ですし、自分を納得させるためにも必要です
(2)職務経歴書はスキルとキャリアをまとめた現役時代の成績表です
(3)履歴書の自己PRは職務経歴書にヒントがあり、潜在的な強さが隠されています
(4)自己PR+志望動機=企業が望む人材像
(5)自己PR+志望動機=やりたい仕事をみつける手段です
(6)面接対応のため
実は再雇用するにしても転職するにしても自身の職務経歴を整理できる時は、定年退職する前後しかありません。その結果納得して再雇用を選ぶことで5年間しっかりと働けますし、職務経歴を整理した結果やりたい仕事がみつかり転職することも後悔のない再就職だと思います。
”なんとなく”、”一般的にそうだから、、”の理由で選んだ人の大半は半年から1年後に長年在籍した会社への不満が溜まり、無職か転職することになります。その段階ではかなり絞られた転職先になってしまいます。そうならないためにも現役時代を思い出して自分に勲章を与えるつもりで整理し、もし面接で自己PRと志望動機を説明するとしたらどう話すか?を考えることは無駄ではありません。
2、再雇用ではなく転職を選んだ10個の理由
(1)できることよりやりたいことを優先しました
安心安定を重視した再雇用では、できる範囲内で精一杯するのが当然です。それは選択肢として間違っていなくて私も迷いました。しかし私には今までやらなかったことをやってみたいと思う気持ちが強かったため、やりたいことをやる期間や多少劣りますが現役時と同等のパフォーマンスを発揮して元気に働ける期間も限られているので転職することに決めました。
私は長年営業職で日本と海外の経験があります。しかしその営業経験が今後の会社のためになるかどうか?疑問に思っていました。コロナ禍を境に対面式、非対面式という新たな方法が定着し、買う側も売る側も非対面式が主流になっています。そんな中、対面式でこそ力を発揮できた私にとって新たな挑戦だと思いました。
(2)データー上では再雇用の方が良さそう
60歳で定年退職を迎えた人の多くが再雇用制度を利用して、再雇用する人が多いです。東京都調査結果(高年齢者の継続雇用に関する実態調査)では、86.1%の事業所が継続雇用制度の導入をし定年者の65.8%が再雇用されています。
厚生労働省の資料によると、定年前と比べた仕事の内容や責任の変化について”定年前とまったく同じ仕事”を与える企業は全体の44.2%、”定年前と同じ仕事であるが、責任の重さが軽くなる”とする企業は38.4%です。年齢的な劣化は誰にでもあることなのに、上記の”定年前とまったく同じ仕事44.2%”は高いなぁと感心しています。
給料では、厚生労働省の資料では、定年前(60歳直前)の賃金を100とした場合、61歳時点の賃金水準は平均値で78.7%。企業の規模によって異なるものの、従業員数が1000人以上の企業がもっとも賃金水準が下がる傾向にあり実際には60-70%程度といわれています。
(3)気持ちの切り替え(主な責任ある業務から外れる)
現役の時は、上下関係、出世、達成感、満足感、給料アップなどが原動力になり、つらいことも乗り越えられました。しかし再雇用になると良い意味でアドバイザー的立場に留まるのが精一杯で、主な責任ある業務から外れることになります。そんな時に”まだまだできるのに、、”、”私だったらこうする!”などの不満感が生まれてきます。
会社によっては、そんな気持ちや意見があればどんどん言ってください。と言いますが、実際は責任ある業務以外からの意見として扱われ、聞いてはもらえますが採用はされないでしょう。
(4)組織、人間関係の逆転
つい先月までは後輩や部下だった人たちとの関係が今後は再雇用者との関係になるわけです。日本の社会では敬語や態度までは変わることはないと思いますが、●●課長、○◯部長が●●さん、と呼ばれるわけです。これもしかたがないこと、、。と割り切れれば良いのですが、割り切れない人にとってはストレスの一部になるでしょう。
(5)モチベーションの維持
組織や人間関係の逆転に割り切れた時、心のどこかに潜む”なんとなく再雇用してもらい、5年間を過ごす安心感”は今までに経験したことがない気持ちです。そんな毎日にモチベーションを維持しながら仕事ができるでしょうか?または適度なモチベーションでした仕事で会社のお役に立てるのでしょうか?
(6)未経験な業界への興味
今までは生活のため、毎年積み上げたきたキャリアを活かすために営業マンをやってきましたが、これは”やりたいことよりできること”を優先してきたことです。昨年くらいから本当に自分がやりたい仕事は何か?やりたいけどできなかった仕事は何か?を考えていました。
やりたい仕事は大抵、未経験な業界にあります。今の情勢から考えると”人不足+人材不足”ですのでかなりの求人があり、今日までいろいろな人から指導してもらったスキルとキャリアを棚卸し明確にすれば、未経験な業界で雇用してもらえると考えました。
(7)自身の価値を試したかった
再雇用であれば自身の価値は会社側がある程度理解してくれ、無理なく再雇用を続けて行けます。しかし半年、1年経ったころに”私はまだできるんです”ような主張をしたところで、さて聞き入れてくれるでしょうか?実は自身の価値は実績を積み上げて成果を出している間だから相手は評価できます。
定年退職時の自身の価値を最大限にするためには、新天地で実績を積み上げて成果をだしていくからこそ相手が評価してもらえます。新しいことを覚えたりすることは大変でしょうが、給料を頂きながら新しい知識を付けらチャンスです。
実は、今回転職活動をしてわかったこととして、”60歳過ぎた転職者”という社会常識から非常に限られた職務になっています。その職務で実績を積み上げればよいだけで難しいことではありません。
再雇用で無理なく始めたが徐々にモヤモヤ感を溜めていくより、新天地での職務に実績を積み上げていった方が自身の価値を大きくすることができます。65歳をゴールにするか70歳をゴールにするかは別として、私は5年計画で自身の価値観を大きくする計画を立てようと考えました。
(8)営業は売るものが違っても方法は同じ
私は法人営業を主にしてきましたが、50歳を期に幸運にも個人営業もすることができました。更にモノの営業からコトの営業もしてきましたので、どんなモノ、コトでも売れる!という強気な自信が私を支え、松下幸之助とマーケティング手法が私のバイブルです。
つまり、人は困った時にしか買わないし、困っていることを解決できることしか売れない(能動買い)。これさえ間違わなければどんなモノ、コトでも売れます。
最初から誰かのサポートや誰かを経由しないとできないことは除外して、以下の5項目で業界、職務を選びました。どの業界、職務も全くの未経験者ですが”営業活動=コミュニケーション力”をコアなスキルにした場合、今までのスキルやキャリアを十分に発揮できると考えました。
ハイヤータクシードライバー | 一般、契約ハイヤーのドライバー |
物流会社 | 3PL(サードパーティロジスティックス)の法人営業 |
一戸建てのリニューアル、メンテナンス | 老朽化した一戸建てへのメンテナンス個人営業 |
海外の人材を日本市場へ紹介 | 次世代を担う青少年たちの人材育成と日本企業へ人材紹介 |
(9)もう一度新人時代の気持ちを持ってみたかった
”60歳の新人です”と新天地で自己紹介することにワクワク感がありますし、知らないことを学べる機会に会えた嬉しさもあります。会社からすると60歳過ぎの人が多く選ぶ再雇用ではなく、転職してくる人への好奇心と期待感があります。
そんな環境の中で、新人の頃は一歩一歩階段を登るように成長していきましたが、60歳の転職者は三段跳び程度で成長していってこそ会社側の期待感を超えることができると思います。そのような人の期待感をこえるような成果を目指すには新人時代の一直線な気持ちに戻るしかありません。
(10)5年間計画を実行し成果を得てみたかった
営業職でいる限り、所属する地域でトップセールスになるくらいの自信と勢いをもたなければいけません。その起点になるのが2年目でのトップセールスです。2年経ってトップセールスになれなければ、年齢を考えても3年目、4年目では無理だと思います。
2、再雇用と転職用職務経歴書のまとめ方9つの項目
これらの項目は転職者の環境によって異なると思いますが、自分の中で長い職務経験を比較することでどのように成長したかを自分で理解でき、読む相手にも明確に伝えることができます。
日本国内営業と海外営業 | 環境への対応力やグローバル経験 |
担当者と管理職 | 管理者経験 |
新規顧客と既存顧客 | 幅広い営業スキルとキャリア |
法人営業と個人営業 | 幅広い営業スキルとキャリア |
数値成果と非数値成果 | 成果の明確化と主張 |
内勤と外勤 | 幅広い職務経験 |
1回目の転職と2回目の転職 | 転職理由、意識の明確化 |
対面式と非対面式 | キャリアと順応性 |
直販営業と代理店営業 | 幅広い職務経験 |
3、スキルとキャリアは別物
スキルとは能力や技術のことで、キャリアとは実績や経歴を表します。一般的にはスキルアップを繰り返した結果、キャリアアップが実現できると言われています。
スキルとは「訓練や学習によって獲得した能力」のことです。 社会経験をする中で意識的に獲得したことは無数にありそれを業務に実現できたからこそ無事に定年退職ができました。自分では当然のことでも他人には特別なことも多く、思いつくことを何でも書き出しましょう。
キャリアとは現役時代の業界においてスキルを身に付け、向上させながら経歴を積み上げてきたことです。会社内では担当者から主任、係長、課長、部長へ昇格できたのはどんな業務でどんな成果を上げたか?がキャリアになります。
スキル、キャリアとも主語の部分をあなた(二人称)、彼(三人称)で考えられる人の方が私が(一人称)でしか考えられない人よりも、身についてスキルやキャリアを相手にうまく伝えることができます。
例えば、日本には”、、、のおかげです”。”おかげさまです”という素晴らしい二人称、三人称の称賛の言葉があります。”私が市場ニーズの掘り起こしをして頑張ったので2023年に社長賞を取った”ではなく、営業企画室のマーケティング結果に沿って市場の掘り起こしをした結果2023年に社長賞を取った。と考えましょう。
(1)職務経歴からスキルを明確にします
(2)職務経歴からキャリアを明確にします
4、60歳定年後の再雇用と転職統計データー
(1)定年退職後の勤務先について
引き続き同じ企業で再雇用されているというケースが65.3%を占め、定年前とは違う会社が約30%な状態です。つまり定年退職後は転職するよりも、スキルやキャリアが継続して活かせる再雇用のほうが多い状態です。
(2)勤務体系と年収について
勤務時間や日数が増えた或いは同水準と答えた人が約64%、業務料も増えた或いは同水準と答えた人が約48%です。一方で年収が減った人は90%超のうち約半分が退職前比較50%以下の状態です。つまり勤務時間や業務量が変わらなくても年収は減少します。
(3)定年退職後の仕事上の責任について
「定年前とほぼ変わらない」が41.9%だった一方、「定年前より軽くなった」は53.7%を占めました。「定年前より軽くなった」と答えた人のほうがより年収が下がる傾向は見られ、「定年前とほぼ変わらない」と答えた人でも「年収が6割程度」と答えた人の割合が23.5%と最も多く、「年収が5割程度」の人も17.6%いた。働き方はほとんど変わらなくても、「年齢」を理由に待遇が大きく悪化しているといえます。
(4)定年退職後も働く理由について
「自分や家族の今の生活資金のため」という回答が最多で61.6%となった。「社会に貢献したい/社会とのつながりを持ち続けたい」(48.9%)や「趣味や娯楽を楽しむ資金のため」(33.1%)を大きく上回っています。継続して働く最大の理由は生活のためです。
引用元:給料4~6割減が過半、定年後再雇用の厳しい現実(日本経済新聞)
5、まとめ
(1)定年退職後はスキルやキャリアを活かせる再雇用の方がデーター上でも多く、進めやすいと思いますが、勤務体系は変わらず給料が下がるのは仕方がない状態です。
(2)仕事上の責任の重さが軽くなることを歓迎すべきかどうかは本人の気持ち次第ですが、私はまだやれる!、私ならこうする!ような要望は通じないことを覚悟しなければいけません
(3)定年後も働く理由で多いのが生活のためなので、”できる仕事よりやりたい仕事”でストレスを溜めないようにすることも選択肢の一つです。
(4)”やりたい仕事”を探すためには綿密な事前準備をします。長い職務経験を整理しながらスキルやキャリアを棚卸しして、転職先が求める人材像に近づけるようにすることで、必ず適した転職先がみつかります。