職務経歴書を作る時に最も頭を悩ますのが成果や実績です。採用担当者に職歴を強くPRするためには”抽象的な表現ではなく、数値などを交えて具体的に伝えること”と言われますが、そんな正確な数値は覚えていないし、業務が数値で表現できるものはなかった!こんなお悩みはありませんか?
私は長く営業をしていましたので、数値で表現できますが、その数値がどれだけの範囲、難易度での成果だったのかを分かりやすく表現し、非数値の業務も多かったので両方を記載しました。
この記事では、数値或いは非数値での成果や実績をどのように記載したか実例を説明することで、職務経歴書をより具体的に強調するための手法としての成果や実務の書き方について説明致します。
1、職務経歴書から採用担当者は何を評価するのか?
企業が定年退職者や年齢不問条件にて募集する目的は、即戦力として活躍してもらいたい業務が既に決まっていて、履歴書、職務経歴書から審査し、面接試験へ進めていきます。適材適所の選考基準は若い世代の転職者よりもはっきりしていますので、企業が職務経歴書で注目するのは下記の5つです。
(1)任せたい仕事に即戦力としての実務能力があるか。:即戦力
(2)現役時代にどのような工夫・努力をして業務に取り組んできたか。:創意工夫
(3)その人の仕事上での強みは何か。:自己PR、強み
(4)具体的にどのような実績をあげてきたのか。:成果の具体性
(5)入社後、どんな業務をしたいと思っているのか。:適材性
上記5項目を盛り込み、A4サイズで1−2枚にまとめます。私は5回の転職経験がありますのでA4サイズで4枚になりました。募集企業の求める人材になるために、企業が注目するこれら5項目の成果や実績を強調します。
2、企業が求める人材を逆算して職務経歴書を作成します<事例>
事例1:物流会社での法人営業に応募した時の職務経歴書の考え方
これまで取り扱った商品、サービスは何か?
取り扱った商品やサービスが企業のものに近ければ近いほど即戦力として評価が高まりますが、私は物流業界の実績がなかったので、物流業界の最新トレンド:3PL(サードパーティロジスティックス)に注目し、トータルサービスの必要な市場調査、非対面式営業:60%、対面式営業:40%の営業活動を自身の過去の法人営業経験からスムーズに対応できることを説明しました。
どんな顧客を担当してきたか(新規顧客/既存顧客)
新規顧客の開拓/既存顧客の維持について、法人営業とより細かな対応が必要な個人営業を経験し、特に法人営業の新規顧客/既存顧客に長い実績があり得意であることを強調することで、企業の顧客種類に近い実績を強調しました。
今までの業界はどんな業界だったか
前述のように物流業界の実績はありませんが、精密機械の法人営業は市場の課題を見つけ、解決策を想定し顧客訪問をします。顧客からのヒアリングで課題を明確にし、将来像を話しながら課題解決を提案します。その方法はそのまま物流業界の3PL営業に活かすことができ、精密機械の営業手法がいかに3PL営業に有効なのかを説明しました。
どんな実績をあげたか(売上、件数、社内表彰)など
日本国内、アジア諸国での営業業務とその頃の売上高を思い出せる限りで記載しました。何十年も前の売上高を正確に記載する方が不自然ですので、”約◯◯○万円”概略で十分です。社内表彰については、一人称表現(私が)は控え、二人称、三人称表現(〜部署の一員として、正確な企画部の市場調査により)とすることで、自分一人ではなくチーム、組織としての成果、実績であることにするのが大切です。
事例2:外国人人材の法人営業に応募した時の職務経歴書の考え方
これまで取り扱った商品、サービスは何か?
中国で日本語教育を中心に、日本への留学、インターンシップ、就職サポートを主な業務に個人営業と法人営業をしていたことを強調することで、日本と中国間であれば即戦力として働けます。
どんな顧客を担当してきたか(新規顧客/既存顧客)
個人営業では学生や保護者、社会人と面談し職業観や将来像を話しながらタイムスケジュールを作成し必要な準備を進めます。法人営業では、日本側の大学院、大学、専門学校や日本語学校と業務提携をし安定的に送り出しができる関係を構築します。
今までの業界はどんな業界だったか
日本語学校を開校し日本語教育を中心に次世代を担う中国人青少年たちを日本へ輩出する事業です。経験上では中国だけですが、同世代の抱える不安や職業観などの将来像には共通点があり、解決策からビジネス展開できることを強調しました。
どんな実績をあげたか(売上、件数、社内表彰)など
売り上げの比率は日本語教育:30%、日本への人材紹介:70%。日本語学習者の年間獲得人数、日本への人材紹介人数を記載することで、実際の実務経験を表現しました。また当時の会社は募集企業側と同じようなベンチャー企業が多いので、少数社員の創意工夫、失敗事例、成功事例の共有を欠かせないことを強調しました。
3、成果や実績を数値で表現できる場合の事例
いろいろな転職サイトに参考となるフォームがありますので、自分の職歴に合うフォームを見つけてください。以下に実際に私が使ったフォームを紹介します。
会社名 | ◯◯◯株式会社 |
事業内容 | 電子部品開発製造 |
設立/資本金 | ◯◯○年/◯◯億円 |
売上高/社員数 | ◯◯◯億円/◯◯人 |
在籍期間 | 業務内容 |
20XX年4月〜20XX年11月 | 〇〇株式会社入社 3ヶ月間社内研修後日本(◯◯エリア)を担当して◯◯◯のメーカー直接販売 |
【実績】 20XX年度:○○億円の売上を達成し事業部内トップ賞 20XX年度:企画室が商品化した○○製品の新規市場開拓で◯億円の売上を達成 【営業スタイル】 法人営業(新規開拓60%、既存顧客40%) 【担当顧客数】 50-70社 【業務内容】 担当エリアにある製造業へのメーカー直接営業 <新規開拓> マーケティング、課題解決提案、見積書提出、受注活動 <既存顧客> 購入後のヒアリング、市場要求の情報収集と社内へのフィードバック、リピート商談への展開 | |
20XX年12月〜20XX年11月 | 〇〇株式会社入社 3ヶ月間社内研修後日本(◯◯エリア)を担当して◯◯◯のメーカー直接販売 |
【実績】 20XX年度:○○億円の売上を達成し事業部内トップ賞 20XX年度:企画室が商品化した○○製品の新規市場開拓で◯億円の売上を達成 【営業スタイル】 法人営業(新規開拓60%、既存顧客40%) 【担当顧客数】 50-70社 【業務内容】 担当エリアにある製造業へのメーカー直接営業 <新規開拓> マーケティング、課題解決提案、見積書提出、受注活動 <既存顧客> 購入後のヒアリング、市場要求の情報収集と社内へのフィードバック、リピート商談への展開 |
【スキルと経験】
◯ 企業でのビジネストレーニング(ビジネスマナー、マーケティング、PowerPoint資料作成など)
◯ Office(ワード、エクセル、パワーポイント)で社内文書から社外への正式書類まで作成できます。
特にパワーポイントを使い見せて理解してもらう営業資料作りを得意としています。
◯ 他ソフトウエアーはイラストレーター、Inkscapeを使いデザイン、画像修正などができますでの、
カタ ログ、取説書、パッケージデザイン、名刺、ホームページデザインなどができます。
【自己PR】
◯◯◯、、、、、、、、、、、
4、成果や実績を数値で表現できない場合の事例
数値化できない場合も同じようなフォームで記載します。数値化できる職種の人は”何をしたか”という成果や実績になりますが、少ない方は無理に作り出すよりは”どのように取り組んだか”、”どんな努力、試みをしたか”をアピールしましょう。募集企業側は意欲を持ち、創意工夫しながら業務に取り組んだ姿勢を評価してくれます。
◯総務課として●●万円のコスト削減に成功し、総務課として●●賞を受賞しました
◯企画室で新規企画した製品が市場販売され●●台/年間販売できました
(1)事例1:ショールーム、受付など何気なくやってきたことに注目します
”1日20人〜30人の来客者へ対応しました。”では成果や実務をPRすることはできません。
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(2)事例2:デスクワークが多かった方も違う角度で見ます
できるだけ残業しないように業務内容の効率化、分散化をしました。成果や実務をPRすることはできません。
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5、成果や実績は二人称、三人称表現を入れる
職務経歴書を作る時に、つい力が入ってしまい”私が:一人称”の表現になってしまいます。特に60歳定年退職後の人が自分の会社の文化習慣に馴染めるか?というのも大切な選考ポイントです。採用担当者は属人性、非協調性の有無を敏感に感じとります。その原因が”私が:一人称”の多用化です。
職経経歴書はできるだけ二人称、三人称で書き、一人称の部分は以下に説明する自己PRの章にまとめて作成します。
(私は)年間5億円の売り上げを上げトップ章を受賞しました
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6、自己PRを更に強調するためにエピソードを含めます
(1)自己PRはエピソードを含める
60歳定年退職には長い歴史の中にいろいろなエピソードがあります。そのエピソードと自己PRを繋げると、説得力ある自己PRができます
◯どのような背景の中で
◯どういった視点・姿勢で取り組んだのか
◯難しさ、複雑さから自身の考え方や、工夫・努力した点
(2)自己PRと志望動機内容は一貫性を持たせる
自己PR+志望動機=企業が求める人物像
自己PRは今までのスキルやキャリアから自身の強さを表現します:入社前
志望動機は入社後に活かせるスキルやキャリアを表現します:入社後
企業が求める人物像が明確=入社意欲が高い
大きな業界を選び、その業界にある自社に絞り込んでいることが企業側に伝わり、企業側も必要な人材に適しているので入社してもらいたいと思います。
入社前のスキルやキャリア=入社後に活かせるスキルやキャリア
企業が求める人材が持つスキルやキャリア(自己PR)が活かせる企業を選んでいる(志望動機)
7、自己PR、自己紹介、長所の使い分け
長い現役時代の中でいろんな環境に対応してきましたので、改めて自身を見つめ直す基準が”自己PR、自己紹介、長所”であり、しっかりと使い分け表現します。
自己紹介=応募者の基本情報
長所=資質や性格がもたらす仕事への取り組み方、姿勢
自己PR=現役時代に経験した職種によって身に付いた強みですので、スキルやキャリアの棚卸しが必要です
(1)棚卸しした内容に数値をつければ説得力が増します。
事例1:営業職
新規顧客からの受注量●●件/年間
目標売り上げ達成100〜120%/3年連続
事例2:製造、技術
●●の製造効率●●%改善
●●の品質改善●●%
事例3:企画マーケティング
新規プロジェクトを立ち上げ●件/年間
(2)数値を付けられない場合は以下の3点から見つめ直しましょう
◯ これまでの経験で、苦手だったことができるようになったことは何か?
◯ 〜のような課題でなぜ取り組もうと思ったのか?
◯ 同部署の周りの人と比べて自分が得意としていることは何か?
(3)スキルやキャリアをキャッチコピーでまとめる
自己PRからキャッチコピーを考えます。このキャッチコピーが自分に身に付いたスキルであり経験年数によるキャリアになります。”あなたのスキルやキャリアをまとめるとどんな人材ですか?”
例えば私の3大スキルは3つあります。
◯ マーケティング手法を使いこなし新規開拓を得意とする思考型営業マン
◯ コミュニケーション力から顧客の課題を聞き出し解決策を提案できる営業マン
◯ 新規顧客+既存顧客=常に120%目標達成を維持できます
8、まとめ
(1)成果や実績は数値化、非数値化の両方で表現できます。
(2)60歳定年退職者の転職は若い世代の転職時とくらべて”即戦力として活躍してもらう業務が明確になっていますので採用担当者の評価ポイントを推定して、逆算して職務経歴書を作成します。
(3)数値化できる職種の人は”何をしたか”という成果や実績になりますが、少ない方は無理に作り出すよりは”どのように取り組んだか”、”どんな努力、試みをしたか”をアピールします。