資格も取った!知識も勉強した、、さー!!タクシー運転手になれた!と思ってもどのエリアでどんな乗務をすればいいのか?事前研修だけで即実践するのは不安もいっぱいで急には無理です。
私が配属された営業所には10数名の指導員がいて、出庫前点呼が終わると新人運転手は別の部屋でミーティグがあり、更に約10回程度実戦講座と指導員を同乗して公道を走りお客様を乗せる同乗指導がありました。
約3ヶ月間、研修を終え、無事故無違反無クレームなら正式採用になり、残念ながら事故、違反があった場合は1-2ヶ月延長になります。早く正式採用されて一人前になりたい気持ちは誰でもありますが、安全に気持ち良い運転が長くできるようにこの実践研修はとても大切だと思いました。ここでは、実際にどのような実践研修があったのか?、正式採用されるかどうかの判断基準について説明致します。
1、新人研修に配布される資料と内容
(1)研修テキスト
約10回分の座学研修テキスト
このテキストにはタクシー運転手として実践で必要な内容が全て含まれていて、出庫前の20分程度で指導員から説明を受けます。例えば、勤務形態、乗務時間、休憩時間、営業エリア、お客様との接し方、トラブル時に営業所への連絡、メーターとナビの操作、アプリや無線配車の受け方や迎車の仕方、高速利用した場合の会社負担と本人負担、帰庫の納金(売上処理方法)、車内の操作方法、コミュニケーション内容などかなり豊富です。
研修のポイント!:全部を記憶する必要はなく理解して実際に乗務しながら身につけていきます。
(2)クイックマニュアル
座学研修の中でも普段頻繁に必要になる内容がまとめられた小冊子でます。例えば、ガスステーションの位置、メーターやナビの操作方法、コミュニケーション内容、運賃精算方法の違い(現金、カード、チケット、他)による操作方法、高速道路料金の会社個人負担範囲などです。
研修のポイント!:乗務中に困ったことがあれば即そのページを開けるようにタグを付けたり、スマホに画像で保存して”ちょっとしたスキマに見る”工夫をします。
指導員からは乗務中は”研修テキストとクイックマニュアル”はわからないことがあれば直ぐに確認できるように常に携帯するように言われますが、実際には乗務して1ヶ月もすればクイックマニュアルだけ携帯すれば良いくらいに慣れてきます。
(3)名札(新人研修期間)
新人研修期間中で営業所内にいるときは専用の名札を胸に付けます。研修の段階を越える度に小さなシールが貼られ、順調に進んでいる方は3-4枚程度で修了しますが、延長中の方は5-6枚程度に増えます。研修が終了すると、営業所に名札を返却し代わりに社章が渡され正式採用の証となります。
(4)基本コミュニケーション練習
ご乗車ありがとうございます。○○交通でございます
お足元にお気をつけください。ドアを閉めます
どちらまでお送りしますか?
○○ですね?かしこまりました。
安全運転で参りますが念の為シートベルトのご着用をお願いします
申し訳けございません、新人でございます。道のご案内をお願いできますでしょうか?
、
、
こちらでよろしいでしょうか?
○○○円でございます。
○○○円お預かりいたします
○○○円のお返しです。
ありがとうございました
お気をつけくださいドアを開けます
お忘れ物はございませんか?
また○○交通をご利用ください
これらの基本コミュニケーションはタクシー会社によって多少異なりますが、基本コミュニケーションと呼ばれるもので、”お客様からのクレームやトラブル発生時に自分を守る”ものとして必ず必要なコミュニケーションです。
以下実例はどんなトラブル時に自分を守ってくれるか?説明します。
お客様が乗車した後道に迷った、遠回りしてしまった時
”申し訳けございません、新人でございます。道のご案内をお願いできますでしょうか?”を言わないと”新人なら新人、、道がわからないなら言えよ案内するから”とトラブルの原因になります。
などなど、、上記の基本コミュニケーションはお客様への親切丁寧な対応をする目的とともに、運転手自身を守る”魔法の言葉”とも言えます。この基本コミュニケーションを新人研修期間中は毎日指導員をお客様として練習し自然と言えるようにします。
家でトイレの中、お風呂では完璧に言えたのに、、、実際に乗務を想定しながら言ってみると動作と言葉は意外とチグハグして抜けが多くなりますが、指導員相手に4−5もOJTすればスラスラ言えるようになります。
(5)車椅子研修
タクシー車両後面側に緑色かピンク色の車椅子のイラストがあるのを見かけたことはないでしょうか?これは”車椅子のまま乗車できます”という表示です。実際にこのような場面に会うのは1ー2回/1年間程度と言われていますが、断ると乗車拒否になるので、実技研修として対応できるように練習します。
緑色とピンク色ではお乗せできる車椅子の重量に違いがありピンク色の方が重い車椅子までお乗せできます。実技研修では各自が準備〜乗車〜降車まで全部やってみますが、かなり複雑で指導員も迷ってしまうくらいです。私もかなり苦手ですが今までにまだお会いしたことがない車椅子のお客様のためにしっかりと研修しました。
2、新人研修期間中に気を付けること
(1)乗務日に穴を開けない
タクシー会社の内勤スタッフは1ヶ月間の配車スケジュールを作り、その中に新人運転手の配車も割り当てますので、社員数によっては何百種類の配車スケジュールになります。前日や当日になり”休みます”と言われると会社側には空き車両ができてしまい、他に空き運転手を割り当てたり、見つからない場合は稼働しない車両ができてしまいます。
新人運転手は毎日の健康管理も大切な業務の一部なので、特に新人期間中は自身と会社への配慮を忘れずに無遅刻無欠勤を心がけましょう。13日隔日勤務は乗務+明け日;26日間、休み:4日間であり、かなり厳しい日程ですが”頑張れば頑張った分だけ高収入!”を実現するための第一歩だと思いましょう。
(2)何歳でも新人の気持ちで
新人研修の指導員の方々は非常に親切丁寧に対応してくれますが、たまには指導内容に対して”そんなこと言われなくても分かっている”、”今回は単純なケレスミスだ”など思ってしまうこともあるでしょう。
指導員の方々は業務として親身に指導できる期間が限られていて、指導する側も必死なので、新人の側は、新人の気持ちで素直に聞く耳を持つことが大切です。自分が指導員よりも随分年上の場合もありますが、”教えてもらう”気持ち前面に出すことで指導員の方も応えようとしてくれます。
(3)無事故無違反&クレーム無し
タクシー運転手は自分の免許証を担保に乗務します。違反や事故をすると減点され大きなものでは取り消しなどで乗務できないこともあります。個人的にドライブする時よりも公道を使わせてもらっている感謝の気持ちを持ち丁寧な運転をしましょう。新人期間中の違反、事故、クレームは研修期間の延長原因になります。
乗務中のクレームにはいろいろなものがありますので”クレームを受けたくない!”、”クレームを受けたら研修期間が伸びてしまう”など必要以上なプレッシャを持たないようにします。会社側はお客様からのクレームには丁寧に対応する反面、100%お客様を信用するわけではなく、乗務中のドライブレコーダーと照合してどちらに非があるか分析してくれます。
その照合の基準になるのが、”基本コミュニケーション”がマニュアル通りに話せているか?です。このコミュニケーションをきちんとしているにもかかわらず、お客様からのクレームは運転手には非はないと判断してくれます。
新人期間中に初クレームをもらったことがあります。足立区でアプリで迎車に向い、乗車された後に、あ客様は”送り先の住所がわからない”、”なんとなく、、○○を左折して裏口の駐車場まで、、”。それでもなんとか目的地付近までお送りしたにも関わらず、この後会社に”遠回りされ行き先が間違っていた”とクレームが入りました。この時は、きちんと基本コミュニケーションができた上でのクレームで、実際に遠回りしたのが運転手の原因かお客様なのかを分析した結果、運転手には非がないと判断されクレーム扱いになりませんでした。
(4)得意なエリアを広げる勇気と好奇心
研修期間中は、元々地理感があったり、自宅が近いなのどの理由で同じエリアばかり乗務してしまうようになります。これは安心感から余裕のある運転ができますが、2−3日も乗務したらあちこちいろんなエリアにチャレンジすることをお勧めします。
新人研修期間中は歩合制給料ではなく”補証給制”のため売上が少なくても保証給分は固定給としてもらえます。この制度は新人期間中には自由にタクシー運転手を経験させ慣れさせていこうとするもので、その貴重な期間には以下のような重要な試みをする期間なんです。
乗務エリア毎によるお客様動向 |
エリア毎の時間帯によるお客様動向 |
乗務しながら自然とお客様とコミュニケーション |
親切丁寧な運転 |
メータ、ナビの使い方 |
超過運転防止のため適度な休憩 |
休憩場所の確認 |
アプリや無線での迎車方法 |
私は、新宿区界隈に地理感があったので乗務開始当初は新宿付近を行ったり来たりしながら慣れて行き、その後渋谷区、豊島区、板橋区へ広めました。研修2ヶ月目からは新宿区、渋谷区から港区方面へ広め、中野区、杉並区へ広げとにかく走りまくりました。
研修3ヶ月目から一番不得意な中央区、台東区、墨田区、足立区、江東区なども練習感覚で広げて行きました。売上に関係なく保証給がもらえるから、これほど自由なことはありません。
(5)自分なりにマップ作成は都内地図帳
他の運転手からお客様が乗車しそうなエリアや場所を聞いたり、YouTubeなどで調べて試してみるのは、運転に慣れてくるもう少し先にして研修期間中はとにかく走ることです。幹線道路を覚えるのは机上では効果はないので、実際に道路名、交差点名、JRや私鉄の駅、デパートなどを通過して目で見て体験することが近道です。
事前研修の時に購入した”都内地図”に蛍光ペンで走った経路に線を引くようにしました。研修期間なので、空車の時やお客様が降車後にどれだけ時間を使っても自由なので、忘れない程度に経路に線を引きました。最初は自分への満足感で始めたことですが、その後のエリア拡大の時や経路を覚え始めた時に以前走った経路との交差点であったり、点と点が線で繋がった時は嬉しかったです。
3、誰でも何でも聞くことが新人期間中の最大に強み
新しい業界、会社に入った時は、誰でも年齢に関係なく新人の頃はあります。最初の3ヶ月間は誰でも何でも恥ずかしがらず聞くことが上達の近道なので”聞ける強み”を有効活用しましょう。
聞くことは恥ではなく聞かないことで、後々知らないことが恥だということを改めて知る大切な時期です。
では、どんなことを聞いたか?研修で習ったことやそうでないことまで様々です。
休憩場所、トイレ、喫煙場所 |
路上パーキング場所 |
実際にどんなトラブルがあったか?どう対応したか? |
売上から実際の給料の計算式 |
有給休暇 |
組合について |
遅刻、早退、休暇 |
車内忘れ物への対応 |
メーターやナビの使い方 |
高速道路の自腹利用 |
研修期間中はどんな乗務をしたか? |
4、新人運転手が入社3ヶ月目からが一番大切なワケ3つ
タクシーの新人運転手は、勤務を始めて3〜6か月目が事故の発生率が最も高いとされています。この時期に事故が増える主な理由は以下の3つです。
統計データーにあるように入社3ヶ月目から事故多発を防止するために、各タクシー会社は運転手の人間性や自己管理能力を高く評価し面接時の大切なポイントにしています。詳しくは【タクシー会社面接人間性重視】親切丁寧な対応にはワケがあるに詳しく説明していますのでご覧ください。
(1)慣れによる過信
事前研修とは違い配属後の3ヶ月間の実践研修は保証給をもらいながら一人前のタクシー運転手になるための研修です。毎日の乗務は新人運転手でも一般運転手同様の勤務形態です。1ヶ月目は緊張感でいっぱいですが、2ヶ月目にはその緊張感に慣れが加わり日常のペースが少しつかめます。3ヶ月目には緊張感よりも日常乗務への慣れが大きくなっていきます。実は慣れてきたとはいえ、運転手経験では2−3ヶ月間程度で乏しいにも関わらず、慣れから過信が生まれ注意散漫が原因で安全確認が疎かになります。
(2)長時間労働と疲労
一人前のタクシー運転手になるため、隔日勤務で長時間勤務が一般的になります。その結果、長い時間をかけて隔日勤務の習慣に慣れていかなければいけないところ、2−3ヶ月目では期間が足らないので気づかないうちに疲労が蓄積します。”疲れている”ことが普通なんだと思い込み、乗務を続け慣れようと無理をしてしまいます。これにより判断力や集中力が低下し事故リスクが上がります。
(3)運転環境への未熟な対応
タクシー運転手は様々な道路や交通状況に適応する必要がありますが、新人の頃では複雑な運転環境に対する経験は当然不十分です。運転技術は車幅、車間などほとんどが感覚的なことですので、上記の過信や疲労が重なってしまい予期せぬ状況に適切に対処できないことがあります。
狭路などではプライベートでは入って行きたくない道路でも、お客様の家がこの狭路の先にあるなら行かなければいけません。そんな時は要注意です。
5、まとめ
タクシー会社によって実践研修内容に違いがあります。
基本コミュニケーションは丁寧な積極とトラブル時に自分を守ることになります。
健康管理はタクシー運転手の基本であり、研修期間から既に始まっています。
研修期間中は得意なエリアから広げる勇気と好奇心を持ち実践します。
入社3ヶ月間は聞くことを恥じず、何でもどんどん質問しましょう