シニア層が新たな挑戦として中国日本語教師としてのキャリアを築くことは素晴らしいことです!。なぜなら中国は日本語学習者数や日本語教師数が桁違いに多く更に増加傾向にある巨大な市場であり、異文化の中で自らの経験を活かし、次世代を担う青少年達に日本語を教えることは、自身にとっても大きな成長の機会となるります。しかし、海外での生活や仕事には不安がつきものです。何から始めれば良いのか?、何を準備すれば良いのか?悩む方も多いはずです。そこでこの記事では、中国で日本語教師を始めるために必要な4つの事前準備を詳しく解説します。これらのステップを踏むことで、自信を持って新しい環境に飛び込むことができます。
1、中国日本語教師になるための資格取得やキャリア基礎固め
(1)日本語教師養成講座の受講
オンラインや日本語学校での教師育成講座で420時間以上の受講をお勧めします。
「日本人だから日本語は教えられる」と思っている方も多いのですが、実際に現場に立つと「使うのと教える」のは全く別物なんです。例えば、、複雑な「助詞の使い方、動詞や形容詞の変更、敬語」など私たち日本人は自然に使っていますが、外国人にとって毎回使い方が違う!なぜ変化するのか?の”なぜ?”、”いつ?”、”どのように?”を教えるには実は教え方があります。
7-8年前までの中国では日本語教師は会話の授業だけを担当し、文法や作文は中国人教師が担当している学校が多く、日本人教師は教科書でネイティブを話して聞かせることが主な仕事でした。その結果、N2級、1級に合格しても会話ができない生徒が多かったのです。
例えば、”你好是こんにちは”。そんな間接的な指導ではなく、育成講座で”こんにちは”を教える直接指導の方法は中国でも教え方としても効果的です。
中国の某大学から「会話力強化のために」教師の要請があり現場見学をさせてもらったところ、ネイティブを話して聞かせる授業だけ日本人教師がしていました。それが良い悪いではなく、「習う日本語ではなく慣れる日本語」を教えるには少し修正が必要と思いました。そこで新学期から教材の選定から直接指導で「文法+会話」全てを担当させてもらうことを条件に2年間在籍しました。その時に役に立ったのが日本語教師養成講座の内容でした。
(2)ポートフォリオの作成
◯履歴書
◯職務経歴書
◯大学卒業証書コピー
◯資格証明、修了書
どんな指導方法ができるか?授業プランを準備
実際に大学側に提案したのは以下の基礎授業と応用授業の2種類です。「基礎授業」とは大学側から最低限教えてほしいと言われる必須科目のような授業で、「応用授業」では日本人教師の独自性で決められます。大学側もこの応用授業が「日常会話の読み合わせ」だけでは会話力が身につかないのではないか?と気づいていたようです。
基礎授業:文法の授業では日本文化についての例文の多い教科書を選び、習った文法を例文を使い慣れながら慣れながら身につけることを強調しました。
応用授業(選択授業):中国でのビジネス経験が長かったので、ビジネス日本語、ビジネスレター、日中間輸出入業務基礎、マーケティング基礎を授業に盛り込み、社会人になって使える日本語を授業に盛り込むを強調しました。更に2年後には日本語指導の集大成として「日本語弁論大会」で優勝することでした。
シニア層の強みは日本語教育にも活かすことができます
豊富な経験を教材の作成やレッスン内容に反映させます。社会で使える日本語、異文化理解や国際交流の2面から日本語を教えることは、長年培ったコミュニケーション能力を生かし多様な学生に対応できます。
引用元:2021年度海外日本語教育機関調査<独立行政法人 国際交流基金>
日本語を学習する生徒は、「日本語を活かした職に就きたいと思う生徒、日本のアニメが好きだったから、日本に旅行したことがあるから、日本料理が好きだから、英語も含めて語学力をアップさせたい」など、、いろんな背景があります。そのような多様な学生には、数年後に出ていく社会に近い実例を授業に盛り込むことは大変好評でした。
豊富な経験やスキル | 授業に盛り込む事例 |
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営業職経験のある方なら | マーケティング、How to Sales、コミュニケーション、貿易実務などの基礎編 |
物流職経験のある方なら | B to B、B toCの物流の流れや業務内容、ネット販売など仕組みなどの基礎編 |
個人的にブログ経験者なら | ブログ作成やアフィリエイト、SEOなどこれからやってみたくなるようなことの基礎編 |
総務人事経験のある方なら | 日本の会社内での業務内容や人材募集、採用試験など会社側視点でのこと |
(3)求人状況調査
自身で中国国内の大学(外国語学院日本語科)に直接連絡します。現在の中国は日本語教師も満60歳までしか就労ビザが発給できないので、人材不足な状態が続き大学に直接Mailなどで連絡してみても良いと思います。
Mailでは件名と短い文章は英語で記載するのがポイントです。英語が苦手な方には翻訳アプリを使う程度の英語力で十分です。中国語OSのパソコンでは日本語表記は文字化けが多くせっかく受信したのに読めないことも多いのです。英語であればそんな問題はありません。伝えたい内容は日本語でpdfで添付資料として送信すれば、興味を持ってもらえれば外国語学院、日本語科などに転送してもらえます。
ネットでは以下のような情報サイトが検索できます。
JEGSI |
Kamome |
alaworld |
日本語教師中国求人 |
日本語教師キャリア |
引用元:2021年度海外日本語教育機関調査<独立行政法人 国際交流基金>
2、中国日本語教師になるための労働契約書締結
求人情報などから採用が決定すれば「労働契約書」を作成してもらいましょう。一般的には就労ビザが取得できた時点で正式採用になるため、この時点では「仮労働契約書」ですが待遇面(給料、交通費、住居費)、勤務条件などは事前にしっかりと取り決めます。
私の知り合いにもあったトラブル事例として、「口頭やメールで採用が決定したと思い、手続きを進めたところ外国人工作許可通知書が取れない、勤務が開始したが事前説明内容と違うなど」トラブルも多くありました。なぜなら中国は契約文化ですのできちんとした書面に残すことが大切でなんです。
中国日本語教師の基本給与と授業数、追加収入の機会、給与以外の経済的メリットなどをシニア層必見!中国の大学 日本語教師待遇の事実と成功への6つの鍵で詳しく説明していますのでご参照ください
3、中国日本語教師になるための就労ビザ申請
中国で仕事をし収入を得るためには就労ビザ(通称Zビザ)を取得しますがその審査も兼ねる「外国人工作許可通知書」を取得します。
日中間でいろいろな手続きを長期間に渡って行いますので事前に必要な書類を準備しておいきましょう。中には申請から受領まで1〜2ヶ月かかる書類もありますので、必要書類や取得要件が異なる場合など、赴任先の学校(或いは企業)に確認しながら進めます。
引用元:中国査証申請センター
(1)大学卒業者(学士卒業証書)
大学での外国人教師は大学卒業(学士)が必要です。民間の日本語学校では待遇面で差はありますが学士は必須ではありません。
(2)無犯罪経歴証明書
海外の公的機関(大使館・移民局等)から犯罪経歴証明書の提出を求められている方は、自身の住民登録している警察署(例えば、神奈川県に住民登録している場合は神奈川県警)です。もし海外在住者で転出届を提出している方は最終住民登録をしていた地域の警察署です。私の住民登録は東京でしたので警視庁に申請しました。
引用元:無犯罪経歴証明書<警視庁>
<日本にお住まいの方>
現在のお住まい都道府県の警察本部へ行き”無犯経歴罪証明書”発行の申請をします。”無犯罪経歴証明書”は名称のように、犯罪経歴のないことを証明する書類です。
入手から取得までの方法
都道府県の警察本部で申請→都道府県の警察本部での調査結果が外務省へ送付されます→外務省で承認された後、外務省から申請者へ”無犯罪経歴証明書”が送付されます→在日本中国大使館に持参し”認証”を取得します→無犯罪経歴証明書の完成です(約3週間〜1ヶ月間)。
警察本部へ行く時は、特に予約は不要ですが事前に”無犯罪経歴証明書の申請に行きたい”と連絡し持参する必要書類の有無を確認することをおすすめします。
(3)在日本中国大使館
外務省から届いた”無犯罪証明書”のままでは中国では無効です。在日本中国大使館が”認証”という作業(無犯罪経歴証明に認証印が押印されます)をすることで有効になりますので必ず必要です。
取り扱い注意:”無犯罪経歴証明書”は封筒に入っていますので絶対に開けないでください。そのまま在日本中国大使館へ持参し”認証”をしてもらいます。”認証”前に封筒を開けてしまうと無効になり、やり直しになります。
<中国にお住まいの方>
所轄の日本領事館が業務を代行してくれますが、日本側で代理人が必要です。この代理人は外務省から届く”無犯罪経歴証明書”を在日本中国大使館へ持参し”認証”をもらってくれる方を事前に探して、日本領事館へ申請書と委任状(日本側の代理人)を提出します。日本の代理人の必要情報は氏名、住所、連絡先携帯電話番号です。
入手から取得までの方法
日本領事館に行きます(パスポートを持参してください)→領事館で”無犯罪経歴証明書”申請代行を依頼します(申請書と委任状に必要事項を書き提出します)→領事館→外務省→本籍地或いは居住地の警察本部で”無犯罪経歴証明書”を作成→外務省→代理人宛送付されます→代理人は在日本中国大使館へ持参し”認証”後、中国へ発送してもらいます(約1ヶ月〜2ヶ月間)。
取り扱い注意:日本の代理人には事前に了解を得た上で、”無犯罪経歴証明”は開封しないようにお願いしてください。
(4)健康診断書必須
日本或いは中国で指定病院で健康診断を受ける必要があります。中国国内では400-500人民元です。健康診断内容は、通常の健康診断と同じで”採血・検尿・レントゲン検査・身体測定”程度でどこでも受けられる内容ですが、重要なのは指定病院での健康診断書です。
4、中国日本語教師になるための日中間ビザ申請手続き
2024年11月から日本から中国の入国は30日間はビザが不要になりましたので、手続き内容が多少変更されているかもしれませんので詳細はご確認ください。
(1)日本人教師が日本で行う手続き
外国人就業許可証書
中国の受け入れ大学から”査証発行許可通知書”および”外国人就業許可証書”を入手します。
就労ビザの申請
直接或いは旅行代理店を通じて最寄りの在日本中国大使館で就労ビザを申請します。写真は中国へ入国した後の申請手続きにも使いますので、多めに準備すると便利です。
申請に必要な書類は、、
○指定の査証申請書
○査証発行許可通知書および外国人就業許可証書原本とコピー
○パスポート
○写真(3×4cm)などです。
申請から発給まで通常で4-5日程度必要です。この時に発給される就労ビザは一時入国用のビザで中国入国から30日間が有効期間ですので注意しましょう。このビザが就労ビザ?と勘違いされオーバーステイになってしまう方も多いです。そのため入国後に速やかに”外国人就業証”と”外国人居留証明書”を取得します。
日本でビザ申請時における健康診断書の提出は原則不要となりますが、中国現地での”外国人就業証”、”外国人居留許可証”申請時には健康診断書が必要ですので日中友好医院或いは国公立病院など指定病院で診断書を入手します。
引用元:日中友好医院
(2)大学側が中国で行う外国人就業許可書手続き
面接などで内定が出ると大学側は以下の手続きを始めますので、手続きに必要な書類を詳しく聞き速やかに準備しましょう。地域によって申請に必要な書類が多少違う場合があり、特に、本人が準備する書類は日本を出国するまでに詳しく確認して漏れがないようにしましょう。外国人就業許可書申請手続きは受領まで約5~15日かかります。
申請に必要な書類は、、
◯外国人の雇用就職申込書
◯赴任予定者の履歴証明
◯同企業/大学と赴任予定者との雇用意向書/労働契約書
◯外国人を雇用する理由書、本人の資格証明書
◯その他法律や法規で規定する書類(受入れ企業の営業許可証、批准証書、定款)申請地域により健康診断書
◯就業予定の外国人が該当する業務に従事する資格証明(大学卒業書など)
この手続きをしてもらう時、「中国側がなかなか手続きをしてくれないんです」、「中国側が必要な書類が揃わないと言われましたが日本側からの書類は全部提出しています」などの理由で困られ今でも相談を受けることが多いです。実は一般企業で多いトラブルですが、採用側もいろいろな事情があり、雇用契約をした時は人材募集していたが、その後緊急性がなくなったなどの背景もあり、大学一校だけではなく第二、第三候補まで選び同時に進めることをお勧めします。
(3)日本人教師が中国入国後にすること
外国人就業証の申請
中国入国後15日以内に、許可証に基づき中国受け入れ大学(或いは企業)と労働契約を正式に締結します。この時に初めて正式な労働契約が完了しそれまでは仮労働契約です。管轄地の人力資源・社会保障行政部門に「外国人就業証」の発給を申請します。
申請に必要な書類は、、
○外国人就業許可書
○パスポート
○健康診断書(上記手続きで健康診断書を提出している場合は不要)
○雇用契約書のコピー
○外国人就業登記表
○写真
申請から発給までは15日程度かかりますので、入国した翌日から直ぐに始めます。
外国人居留証明書の申請
外国人就業証を受領した後は住所の登録をします(日本の住民登録のようなものです)。入国後30日以内に受け入れ大学所在地の県以上の地方人民政府公安機関出入境管理機構へ”外国人居留証明書”を申請します。
居留証申請から発給まで15営業日程度かかりますので、外国人就業証を受領した翌日から直ぐに始めます。
申請に必要な書類は、、
◯提出書類
◯パスポート
◯健康診断書
◯外国人就業証
◯写真
◯中国の大学の営業許可証
◯外国人居留申請書
約2ヶ月間で進める長い準備で複雑ですが大切なことは自身で全体の流れを理解して、必要書類なども地域によって多少異なりますので、進め方は中国側の学校(或い企業)の指示を受けながら一歩一歩進めることです。契約通り2年間の在籍が経過した時点で交代の日本人教師を紹介した際に大学側から申請から受理までのサポートを依頼された時には全体で3ヶ月かかりました。
5、中国日本語教師になるための中国ビザ取得まとめ
日本語学校での教師育成講座で420時間以上の受講をお勧めします
ポートフォリオ、どんな指導方法ができるか?など授業プランを作成し学校へ提案します
就労ビザが取得できた時点で正式採用になるため、この時点では「仮労働契約書」ですが待遇面(給料、交通費、住居費)、勤務条件などを事前に取り決めます
就労ビザの申請のために「外国人工作許可通知書」を取得します
ビザ申請は日本と中国間で協力して進めるもので、必要書類によっては約2ヶ月間必要です